『坂爪真吾』の名言│おすすめ本ランキングと名言集(性風俗サバイバル)

夜の世界は、公助からこぼれ落ちた人たちが、
自助だけでは生きられない中で、
お互いに助け合いながら、
時には奪い合い、
騙し合いながら築きあげてきた、
いびつな共助の世界であると言える。
幾多の不況や社会変動を乗り越えてきた夜の世界が、
今回のコロナによって、初めて止まった。

性風俗で働いても稼げないけれども、
他に稼ぐ方法が分からないので、出稼ぎに行く。
出稼ぎに行っても稼げないけれども、
他に稼ぐ方法が分からないので、
再び他の地域に出稼ぎに行く……という悪循環。
人間は、困れば困るほど、
自分の行動を振り返る余裕がなくなり、
これまでと全く同じことを、
ただひたすら繰り返すようになる。

強すぎる自責の念は、
時として悪意のある第三者から
利用される原因になってしまう。

SNS上では、正確な事実よりも
「みんなの信じたい情報」
が拡散される傾向にある。

ただ現実は、
「落ちた」でも「飛び込んだ」でもなく、
気がついたら「巻き込まれていた」
という人が大多数なのではないだろうか。

貧困や虐待、道徳的退廃や倫理観の欠如、
親の愛情不足といった
分かりやすい理由ではなく、
「友だちがやっているから」という、
ただそれだけの理由で、
性風俗や売春の世界に
足を踏み入れる若年女性は少なくない。

路上での売春や性風俗の世界が、
法的な問題や社会的偏見、
性暴力・性感染症のリスクを内包しつつも
今日まで生き残ってこれたのは、
警察によるお目こぼしがあったからでもなければ、
反社会勢力が裏で暗躍していたからでもない。
女性が生活に困った時に、
即日で高収入を得られる
唯一の空間であり続けてきた
という既成事実があったからだ。

お金が絡むと、
目の前で起こっている出来事に対して、
感情を切り離して判断することは本当に難しくなる。
しかし、先行きの不透明な状況下においては、
感情ではなく事実を信じるしかない。

既成事実の積み重ねによって
存続してきた世界をアップデートするために必要なのは、
道徳論でも、理想論でも、感情論でもない。
現場で新たな既成事実を積み重ねていくこと、
それだけだ。