井川意高『熔ける』の要約にもなる名言

2017年10月2日にシャバで懲役4年の刑期満了を迎えた。
普通は骨身に染みて懲りて
バクチなんて二度とやるものか
と心に期すものだろう。
だが私の脳髄には、勝負師としてすべてを賭け、
命がけで戦っていたころの疼きが
たしかに記憶されていた。

大王製紙の社長や会長を務めていた当時は、
金曜日の仕事が終わったあと、
深夜便でシンガポールやマカオのカジノへ繰り出す。
そこから土日2日間を丸ごと徹夜して
不眠不休でバカラをやり続け、
月曜日の早朝着便に乗って帰国、
それから出勤していた。

ギャンブルバカは、
種銭が完全になくなるか、
絶対に乗らなければいけない飛行機の時間が来るまで、
とことんやり続けてしまう。

徹底的に破滅的なまでに突き詰めなければ気が済まない。
物事への執着があまりにも強すぎたせいで、
私は人よりも極端な生き方へ走ってしまった。

普通の人がプラス100の経験をして人生を終わるとすると、
私はプラス数万くらいおもしろい経験をさせてもらった。

東京地検特捜部に逮捕され、
獄中に囚われの身となった3年2カ月の経験は、
ほかでは得がたい人生の味わい深い一コマだ。
人生のプラスとマイナスを決算するならば、
大幅な黒字だと満足している。