渡辺格『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』の要約にもなる名言集

グローバル経済といえば聞こえがいいが、
国境を超えてカネ儲けのために
カネをつぎこむ投機マネーが、
市井の人びとの仕事を、
人生を、狂わせていく。
そのおかしさは、
僕が「食」の世界で見ている矛盾と、
分かちがたくつながっているように感じた。

なぜ、僕らはこれほどまでに働かされるのか?
自分の頭で考える必要がある、
と僕は思った。

この日本酒も、
パンやワインの例に漏れず、
神事とは切っても切り離せない
神聖な飲みものだとされてきた。
つまり、洋の東西を問わず、人類は、
「発酵」という作用の背後に、
いつも神様の存在を感じてきたということだ。

菅原道真で知られる北野天満宮には、
麴菌を培養した「種麴」を、
酒屋に独占的に販売する特権が、
室町幕府から認められていた。
パンの世界でイーストが当たり前になるより
何百年も前に、日本では、
麴菌を純粋培養することが
当たり前になっていたのだ。

昔の人にできて、
今の僕たちにできないわけがない。
それができなくなっているとすると、
それは、人間の感性が衰え、
人間が退化してしまっているということだ。

肉体的にハードな仕事で、
カラダの休息が必要だから、
というのは休みが
多いことの理由のひとつでしかない。
どちらかというと、
今以上のパンをつくるために、
パンをつくらない時間が必要だと思うのだ。