山下和美『天才柳沢教授の生活』が読みたくなる名言集・名セリフ

確かに今の2件に関して
あなたの言っていることは正しい
私が正義というのもよく分かる　
しかし
あなたの正義に対して何故人は罵声を浴びせるのか
少なくともその正義が
人を不愉快にしていることは確かです

私は経済学者であるのに
“人に勝つ”“己に勝つ”という考えを
いまひとつ理解するにいたらないのだ
何故そうまでして苦しまなくてはいけないのかね
人間が苦しむことを前提とした理論は
そもそも正しいのかね？

私も真面目にやってはいるが疲れたことはない
疑問を抱いたら即座に解明するように努力し
自分自身に忠実であれば疲れることなどない
私が疲れるとすれば
多分自分自身を偽った行動に出た時であろう
何故多分をつけたかというと
私はいまだかつてそのような行動に出たことがないのだ

ところで君の世津子への愛というものは
一体どういうものなのか教えていただきたい
愛というものはそれぞれ個人差があるであろうから

言葉で言い表せないこともあるんです……

タマよ
いくら言葉を正しく使っても
人間の気持ちの全てを表現することは不可能であるな
これに関しては『分かった』
という言葉を用いることは避けなければならない
タマよ　タマよ
そういえばお前には言葉がなかったな

君は自分の意見を述べたのだ
それはすでに過去に記憶した他人の言葉ではない
君だけの君自身の言葉だ
自分自身の言葉があって
初めて他人と知り合うことができる
他人とコミュニケーションできる
新しい発見ができる
そしてまた言葉が生まれる
それらによって君の知識は
初めて意味のあるものになるのではないかね

先程からお聞きしているとよく分からないのですが
何故腹が立つのですか？

何を言っているのかね柳沢君
君は実際に怒りに来たではないか

うるさければ叱るのは当然のことです
しかしある生徒につまらないと指摘を受けたということは
少なくともその生徒だけは
授業を聞いていたことになりますね
それに対して何故腹を立てる必要があるのです？

マスメディアを通して見たものは
もはや現実ではないのです
己の目で見て確かめなければ現実は分かりません

それは間違いですね
20歳を越えたら独立した人間ですから
どうするかは世津子自身の意志で決まります
ですから奪い取るという行動は成立しないのです
2人でやっていけるという自信があるのなら
堂々と玄関から入ればよいのです
これは最終的には個人の問題でしょう
肝心なのはその後のことです
具体的にはどうやっていくつもりですか？

お父さん
私みたいな人間はこの先
どうやって生きていけばいいんでしょうね
それを考えることはとても楽しいことですね
私も是非加わりたい
一つのことが終わればまた始まりがあります
それは新しい研究の始まりでもあります
そんなこと考えられるのはお父さんだけよ

経済に一番左右されるのは中小企業
理屈は分からなくっても体で分かる
しかし理屈が分からなきゃ先は読めない

大学って実力より派閥が
モノを言うケースが多いんですもの
柳沢教授が学長どころか
学部長にもなってないのがいい証拠です

学び知り教えることの到達点が
学長というのはおかしい論理です

何故泣かされるのですか？
結婚しようと離れて暮らそうと
家族である意識があれば
人間関係に異変が生じるものではないと思います
私は結婚した3人の娘とも
以前と同じように付き合っております

戦争がなんで起こったか教える？
そんなことは私にだってわかりません
簡単に教えられる人が何処にいますか？
ゆっくり……ゆっくり答えをさがすのです
一生かかってもいい
何から考えましょうか……？

あなたはかつて……
僕に吸いつくされたって言ってましたね
でも今度は僕が吸いつくされました
吸いつくしたんでも吸いつくされたんでもない
俺はお前と出会うことで変わったんだ
いいか峯太郎
人間は人間と出会うことで違う人間になっていく
一人では決して気づかなかったものも見えてくる
そして一人では決して
生み出せなかったものも生み出せるんだ！
お前がそれを教えてくれた！
人間は変われるんだ!!

私はここで私の生涯を費やすのに
値する一つの仮説を得たのです
この世で最も興味深いものは人の心だという仮説を

……それで
あなたの仮説は証明されましたかな？

はい
今まさに証明されつつあります

私は大人とは論理的頭脳を持つことだと思っていました
父が伝えようとしたことを私は頭では理解しても
今でもまだ感情では理解していません
父にとって大人とは論理を超えた
何かを理解できる人間のことなのです
だから父から見たら私は…永遠の子供なのかもしれません

怒られなければレポートを書けないのですか？
罰がなければ前に進めないのですか？
それでは何のために
大学に来てるのかわかりません
前に進む道を自分で見つけるために
大学に行くのです

わしに居場所はいらん
居場所があるとすれば
一人立ったその場がほんの一瞬の居場所で
一歩進むと後ろから消えていって
また一歩…進んで人に出会って
それでいい

なるほど
それは私にとって新しい考え方です
私の現時点の悩みは
それによって解決出来そうな気がします
私も華子もそうやって常に前進して行くのです
私から卒業した新しい華子と新しい私との付き合いが
また一から始まるのです
そのように考えると明日からがまた楽しみです

ちら見する奴は信用出来ない

それはあなたの主観であって
ちらっと見るにしても
人それぞれ考え方は違うと思うのです
ひとくくりに信用出来ないというのは
あまりに閉塞した考え方だと思いますが

私はこの世に完全に嘘だと言えるものは
存在しないと思っています
すべては人間という
フィルターを通して変わるものですから
私はそのフィルターを
どう研ぎ澄ましていくかについて
一番関心があるのです

わしは……それでいいと思っている
忘れるのも悪くない
年齢を重ねるにつれシェイクスピアの舞台の台詞が
一言一言……体中に染み入ってくる

for they say an old man is twice a child.
(老人は子供にかえると言うからな)

子供だよ
これからまた子供だ
ワクワクしないか良則

大丈夫
何回暗くなっても明日は来たでしょう?
泣いても笑っても明日は来ますよ
だから正子ちゃんは泣いてもいいのよ
私が笑うから……
帰れますって

お父さんはお父さんらしすぎるから
上手くいかなかっただけだけどね

私は一人なら一人なりに
二人なら二人なりに
生きていくのがよろしいかと思います

彼らとは二度と会えないかもしれないと思うとね
彼らの言葉でつながっていたいんですよ

見るだけじゃ駄目だよ
世界は自分で変えなくちゃ

不思議なものだよ
生まれて初めて自ら弱みを見せたら
どこからか勇気がわいてきたよ

あなたは24時間が全て仕事なのですか?

何かと思ったら

は?

あなたと一緒だと思ってたけど
あなたは人間を研究するのが好き
私は人間を演じるのが好き

俺たちみたいなどん底の人間はな
どう足掻いたって
青空なんか拝めねえんだよ

あの
青空は上を向けばありますが

これほどまでに気高いあなたが
ここまで自分を曝け出したのですから
あなたの中では既にあなたの問題に
立ち向かう準備ができているのではないですか

沈みゆく夕日を浴びながら
多くの不安要素が脳裏に浮かんでは消えました
ですがお母さんだけは確かでした

人は無邪気だった過去の自分や
もう取り戻せない大切なモノに触れると
涙が出るものなのだ
そんなことも知らんのか