『井川直子』の名言│おすすめ本ランキングと名言集

レストランや居酒屋やバーはたしかに、
今すぐどうしてもではない場所です。
けれど誰かにとって、
人生に灯りをともしてくれるような一瞬が、
そこにはあります。

僕のなかでは、今はサバイバルだと思ってるんです。
アマゾンの奥地にポンと投げ出されて、
さあ、どうやって生き延びる?
と試されている。

なぜ雇用を守るのか？
それはレストランにとって
スタッフの一人ひとりは歯車ではなく、
その人でなければならないからです。
誰でもいいわけじゃない、
料理人は技術を持った職人だから。

みなさん、再開したら必ず顔見せてくれるとわかっていますから、
その人たちのために何をしようか？
できることは？
って、毎日考えています。

レストランは、ドアを開けてからが勝負の世界。
一皿ごとに料理をお出しして、
ワインを選んで、おいしそうな顔が溢れて。
お弁当ではその光景が見られないし、
手渡してしまった後は
お店が一気にガラーンとなるんですよね。
寂しいというか。

若いスタッフもこの経験を経たらきっと、
仕事をする喜び、
お客さんが来てくれることの価値に気づけると思う。
満席っていうのは、
あたりまえのことじゃないんだって。

店の外側で、自分たちではどうにもならないことが起こっている、
それだけのこと。下を向く必要はない。
置かれている立場なりに、
すべきことをしていけばいいと思っています。
淡々とではないですね、どちらかといえば
立ち向かう心構えです。

ワインは、人間が生きていくために必ずしも必要ではありません。
しかし魂のためには必要なものなのです。

不要不急でも、うるおいをもたらすもの、がありますよね。
人が生きるためにはむしろそっちのほうが必要で、
それがあるからこそ、この苛烈な社会でも生きていける。
レストランの仕事は、そういうところにあるのだと思います。