女優『中谷美紀』のおすすめ本がわかる名言集

演じるということを職業にしているにもかかわらず、
人前に出ることは
決して得意なほうではないし、
何かしらの結果を出さなければならないと思うと、
未だに身がすくむ。

時々仕事を惰性でしているなぁ
と反省することもある。
馴れ合いやルーティーンは極力避け、
緊張感や節度のある関係を大切にしているけれど、
自分の怠慢から、可能性が停滞することがある。

映画の宣伝で同じことを繰り返すうちに、
相手との対話ではなく、
宣伝文句の羅列になってしまう。
そんなのはサイテーだと思いながら、
鮮度の落ちた会話を続ける能のなさ。

日本人の、眼が口ほどに物を言い、
一を言って十を理解し合う
コミュニケーションは大変洗練されていると思うし、
古の時代から感情をあからさまに表にするのではなく、
隠すことを美徳とする文化は決して嫌いではない。

その一方で、人の心の機微に敏感な私には、
人の発する言葉とお腹の中の矛盾が痛く
心に突き刺さることも多々あって、
西洋人の正直さが気楽だったりもする。

いつだって平穏な日常を望んでいるし、
大変な思いなどしたくないけれど、
結局いつも、いばらの道を分け入ってもがいている。

いつになったら楽をできるのだろうかと、
その日の来るのを心待ちにしているのに、
私のもとに舞い込んでくる仕事のなんと困難なこと。
そして、そんな困難を嫌だといいながら、
どこかで楽しんでいる自分がいるのだった。

旅をするほど、未知の文化に触れるほど、
自分の価値観のみが正しい訳ではないということに気付かされる。
誰かにとっての正義が他の誰かにとっての正義とは限らない。

仕事に勤しむ最大の理由は人生を豊かにし、
楽しむためであって、
仕事のために人生が犠牲になってはならない。

ヨーロッパの人々が
その週は旅行に出かけるから
という理由で仕事を休んだり、
音信不通になったりする日常に触れ、
人生で多くのものを置き去りにしてきたことに気付かされた。

庭仕事をしたり、散歩をしたりという何でもない日常は、
私が数十年間犠牲にしてきたものだった。
そうした日常を取り戻しつつ、
ここ数年はドイツ語の学習が加わり、
別の意味で忙しくしているけれど、
この年齢でもまた新たなことを学ぶ余地があることが嬉しい。

滞在許可証をいただくからには、
もっとドイツ語を学び、
こちらの歴史と文化に敬意を払い、
多種多様な国々から集まる
人々の異なる意見を尊重できる人間でありたい。

人々が苦難にある時こそ、
ウィーンフィルの音楽は演奏され続けてきた。
最高の幸福の瞬間にも、極度な逆境の瞬間にも、
私達は芸術家を必要とする。